2020年7月5日日曜日

先人の技術


骨董市で、水屋さんの店に麻糸が置いてありました。
今日に限らず、水屋さんは麻糸をときおり持っています。おもに民具を扱う骨董屋さんなので、民具を買いつけたとき、麻糸が一緒に出てきて、目にすると放っておけないものなのでしょう。
我が家には、水屋さんから買った麻糸がすでにあるので、最近は麻糸を見ても気にかけたことがなかったのですが、今日はほかに欲しいものもなかったし、安ければ買うつもりで値段を訊いてみました。


「両方で1000円かなぁ」
「そう...」
2束あるうち、1束だけ買おうと思ったのですが、そうはいきませんでした。


手に取った1束は、わりあいしなやかな繊維だったのですが、もう1束は、固めの繊維を柔らかめの繊維で結んであるものでした。
もっとも、繊維が固かろうと柔らかかろうと、私がこれを裂いて、んで(うんで(つないで))、糸にして反物に織るわけではあるまいし、気にすることはありません。
麻糸と言っても、大麻ではなく苧麻(からむし)ではないかと思われます。
  

というわけで、2束いただいてきました。

そのおり、水屋さんの店先には珍しい、つくしの形をしたこけしがぽつんと置いてあったので、その値段も訊いてみました。


「面白いでしょう?それも一緒で1000円でいいよ」
というわけで、つくしのこけしもやってきました。


左の一番大きいつくしは首しか動きませんが、右のつくしは首と、その1段下の2か所が動きます。


つくしのこけしという発想も面白いのだけれど、最初に目に入ったのはこの飛びがんなの技でした。
「とっとっとっ」
と、美しい飛びがんな(のみ?)の目がついていて、「雲仙♨」と印が押してあります。
観光地のお土産ものは、もともと地元でつくられていましたが、あるときから産地が入り乱れ、江の島の貝細工、東北各地のこけし、アイヌの彫りものなど、その土地だけではなく、遠くの観光地でも売られました。観光地のお土産ものの中には、日本国内だけでなく、遠くナイヤガラの滝やエッフェル塔など、海外の観光地にまで送られたものもありました。
それゆえ、このつくしも九州でつくられたものかどうかは不明です。しかし、飛びがんなと言えば、焼きものでは九州の小鹿田(おんた)焼や、小石原焼が有名です。木工の飛びがんなも同じように九州でつくられたとも考えられます。大分の柘植細工など、九州は木工も盛んでした。


それにしても、つくしのこけしはよくできています。
緑の草原を表している、飛びがんなの台。中くらいのつくしは斜めに立ててあるので、2か所動くようにすると動きがより面白い、ただ者ではない発想と技です。
形が形だけに嵩張ります。ところが、中くらいのつくしは抜くこともできるので、接着が不十分で経年で取れたのではなく、箱に詰めるときは抜けるように、わざとつくってあったのかもしれません。
ただ、作者の力量はともかく、抜いてもなお嵩張るので、お土産としてよく売れたかどうかは疑問です。

さて、家にあるはずの麻糸は、埃を恐れてどこかへしまい込んだみたい、また家探ししないと出てきそうにありません。






6 件のコメント:

af さんのコメント...

麻糸は何に使うのですか?
麻の服は、断然さらりと心地よいので好きなので、麻糸と聞いて、気になります。

さんのコメント...

akemifさん
その昔、貧乏人には麻の着物しかありませんでした。特に東北は寒くて綿が育たないので、冬でも麻の重ね着でした。明治になって木綿の古着が東北にも出回るようになり、やっと木綿を着られるようになりました。
麻(草からつくった繊維の総称)は木綿以前、ずっと日本人の衣類を支えてきました。近年は小地谷縮などの糸を下請けとして作る農家もあって、麻が栽培されていました。
akemifさんの想像している麻は、きっとヨーロッパの亜麻(リネン)でしょう。

af さんのコメント...

春さん、ありがとうございます。
麻と亜麻…まったく別物…
知らなすぎですね。
ありがとうございます。

さんのコメント...

akemifさん
まったく別ものというわけではありません。両方とも麻ですし、糸にし方もほとんど同じです。
私の過去の記事、「もぐらとずぼん」http://koharu2009.blogspot.com/2015/10/blog-post_29.htmlとか、「わたしのスカート」http://koharu2009.blogspot.com/2015/10/blog-post_28.htmlとかを参照してください。
しつこいようですが、「アンギンの発見」http://koharu2009.blogspot.com/2014/06/blog-post_17.htmlも参考になるかもしれません(笑)。
http://を写さなくても、「八郷の日々 もぐらとずぼん」とかで出てきます。

rei さんのコメント...

麻の事、私は詳しくは無いのですが、栃木県鹿沼市が日本の麻生産の90%を占めているそうで、友人がその普及活動をしています。一昨年「日本麻の祭典」が鹿沼で開催されました(これも釈迦に説法かも)。

「もぐらとずぼん」を見ると、縫製係は鳥ですが、丁度数日前にFBで、鳥が巣作りをしている動画を友人がシェアしてくれました。器用にくちばしで葉を縫って巣を作り上げて行く姿に感動しましたが、いつ誰に教わったのでしょうか。

さんのコメント...

reiさん
鹿沼市では無毒麻を栽培しているようですね。いつだったか、麻栽培の映画を見ましたが、許可を取り、畑を囲った農家しか栽培できません。無毒麻でも同じようですね。伊勢神宮の注連縄とか横綱のまわしとか、今でも大麻の需要があり、栽培をやめるわけにはいかないのだそうです。
友人がその昔、鹿沼市で大麻ではなくカラムシ普及活動(カラムシ、http://koharu2009.blogspot.com/2014/06/blog-post_27.html)をしていました。鹿沼市は麻栽培に適しているのでしょうね。
福島県の昭和村でも、盛んなようですが、無毒麻は鹿沼だけなのかなぁ。無毒麻がもっと普及するといいですね。

ほんと、鳥の巣のつくり方、すごいです(機織り鳥の巣、http://manekineko44.blogspot.com/2011/06/blog-post_03.html)。