2020年10月18日日曜日

子どもの着物

         

10年ほど前だったか、
「もらった本だけど、もう見たから」
と、母がくれたのは、『着物と日本の色、子どもの着物篇』(弓岡勝美のコレクション、ピエ・ブックス、2007年)でした。


弓岡勝美さんのコレクションで、江戸末期から昭和の初期までの子どもの着物を紹介しています。庭梅色とか早蕨色など、おもに着物の地色について説明している本で、各々の着物がつくられた時代などについては説明がないのが、ちょっともの足りない本でした。
私はどちらかと言えば、木綿の着物に背守りだけは心を込めて丹念に手づくりしたような、庶民の着物の方が好きですが、お金持ちしか着なかったような着物にも、子どもの着物にはつくった人の優しい気持ちが込められているようで、心惹かれるものがないわけではありません。
紋様は吉祥や花が一番多いのですが、中にはユニークな模様もあります。


友禅と絞りで貝を散らした着物は、裁ち合わせの楽しさを満喫できるものとなっています。


同じ貝と言っても、海藻のミルとの取り合わせとなると、斬新さにびっくりします。しかし、ミル模様の着物は珍しくはなかったそうです。


男の子のお祝い着は、おとぎ話模様などあって、色遣いも独特でした。
江戸時代に武士の間で行われていた、頭髪を初めて伸ばし始める3歳児の「要置」の祝い、5歳男児の初めて袴をつける「袴着」の祝い、そして7歳女児の、つけ紐を取って初めて帯を締める「帯解き」の祝いを一緒にまとめた「七五三の祝い」がはじまったのは、明治になってからでした。


男子の着物は、縮緬ではなく羽二重でつくられました。
明治後期の新聞を見ると、親たちは食費を切りつめても、七五三を祝ったそうです(雑誌『共立女子大学家政学部紀要』の、「明治・大正・昭和の七五三祝い着に求められたもの : 近代化がもたらした変化」丸塚花奈子著より)。


そして、汽車、飛行機柄の着物など、時代を取り入れた着物が流行った時代もありました。息子たちも母に、新幹線の浴衣をつくってもらいました。


これは、女の子の祝い着の、王道とも言える模様です。


私的にはこんな着物が好きです。
どんな時代のどんな子どもが、この幸せな着物を着たのでしょうか?






2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

私はやっぱり貝とミルに惹かれます。淡い水色と赤の組み合わせが素敵すぎる!
ミルって一般的ではないと思うのですが、昔の方が食用として親しまれたんでしょうかね~。
伊勢神宮に奉納されていたからか、今でも三重県ではスーパーで売っているみたいです。

さんのコメント...

hiyocoさん
一枚だけ選ぶとして、ミルの着物を選ぶって、相当なものだと思いません?
どちらかと言えば海に近い方で染色技術が発達して、ミルは親近感の持てるものだったのかもしれません。
じつは私も子どものころから浜に打ち上げられた海藻の中で、ミルだけは名前を知っていました。誰かが教えてくれたのだと思うけれど、それほど身近なものだったのでしょうね。全然食べたという話は聞きませんでしたが。