2020年10月1日木曜日

中国の車つき土人形

 

『中国郷土玩具』より、馬車で里帰り、1949年頃


『中国郷土玩具』(中国人民美術出版社+美乃美、1981年)に載っている、馬車を走らせている中国の土人形です。
私は、これとほぼ同じ色と形の土人形を持っていました。1980年頃、夫が仕事で中国に行ったおりに買ってきてくれたもので、大切にしていましたが、ある引っ越しのとき、包み方が悪かったのか押しつぶされて粉々になり、とても修復できる状態ではなくて、泣く泣く処分してしまいました。


『中国郷土玩具』の目次(カテゴリー分け)は、「古代」、「1949年前後」、そして「北京」、「東北・華北」、「西北・西南」などの5地域、「獅子と虎」などとなっていて、この土人形は、「1949年前後」に分類されています。残念ながらどこの地方でつくられたものかという記載はありません。
ちなみに、1949年とは中国革命の起こった年です。それまでも、民間芸術は宮廷芸術に比べてまったく軽んじられてきましたが、革命以降近年までの中国では、郷土玩具どころではない暮らしが続きました。とくに文化革命のときは、少数の人々のもとにあった郷土玩具も、見つけ出されると、ことごとく破壊されてしまいました。

さて、私の持っていた「馬車で里帰り」は、失われてから久しいので、大きさはうろ覚えですが、手のひらに乗るサイズでした。『中国郷土玩具』に掲載の人形には、長さが11センチと書いてあり、それくらいの大きさだった気もするし、もう少し大きかった気もします。
そんな私が最近、ヤフーオークションで、よく似た人形を見つけました。



ロバ(馬?)の足、車輪、御者の座り方など、ほぼ同じようにつくられています。
ただ、長さは8センチ弱、「馬車で里帰り」より一回り小さいものです。



ヤフーオークションで出てきたということは、どなたかのコレクションだったものだったのでしょう。ちなみに、この出品者の出品している、同じ木箱から出てきたというほかの人形を見ると戦前のものばかり、この土人形も「1949年前」のものではないかと思われます。
つくられた場所も、「馬車で里帰り」に近い地域、あるいは同じ地域でつくられたものに見えます。



『中国郷土玩具』の「1949年前後」の項には、似た郷土玩具がいくつか載っていました。



幌掛け、花売り、幌つきと名前をつけられたこれらの人形は、いずれも11センチ前後、同じくらいの大きさです。



動物の足のつくり方、車輪のつくり方、御者の座り方など、これらも「馬車で里帰り」と特徴が共通しています。



一回り小さいので、そう存在感は大きくありませんが、それでも素敵です。
これまでも時々、偶然出逢った中国の土人形、ネット時代ならではの邂逅に、ただただ、嬉しさをかみしめています。





2 件のコメント:

rei さんのコメント...

良いですねー。日本の郷土玩具の土人形とは一味も二味も違います。
日本の土人形は、人体や動物(鳩など)単体の物が殆ど(動きの無い)で、乗り物や道具を加えて、躍動や風景まで感じさせてくれるものは見当たりません。

20年以上前の事になりますが、「花売り」を見て、近くの団地の片隅にリヤカーを停めた花売りを思い出しました。「花売り」の様に、腰の曲がった高齢の男性でした。何処から花を積んでリヤカーを引いて来るのかは分かりませんでしたが、いつの間にか見掛けなくなりました。

さんのコメント...

reiさん
そういわれれば、中国の土人形の中には、その背景まで見えてくるというか、町の風景を切り取ったようなものが、日本の土人形に比べると多いですね。
日本の土人形は、御所人形など宮廷人形を模倣した博多人形の、さらに模倣と考えられていますが、中国の土人形も宮廷芸術の模倣だったとしたら、ルーツが見えて(独断ですが)うなずける気がします。というのは昔、故宮博物館だったか北京の博物館だったか、あるいはそのどちらでも見たことがあったのは、象牙を彫り出して、街の様子を精巧に映し出した置きものでした。
私は宮廷絵画とか工芸とかには関心はないのですが、2mもあるような太い象牙にいろいろな店、散策する人、行商人、犬などまで彫り出しているのを見たときは、もうその中に入り込んでしまったような気持ちになりました。よく覚えてないけれど、人は100人もいたんじゃないかしら?
そのさらに昔に、兵馬俑などがあるのかもしれませんね。