2015年4月22日水曜日

直して、直して


お皿は割らないで、傷がないのを使っているのが最高ですが、きれいに直すと、無傷のものに遜色がないほど、愛おしいものになります。
祖母の家で使っていた、大きな、鉄色の焼きものの火ばちにはひびが入っていて、数ヶ所、小さな鎹(かすがい)のようなものが打ってありました。
焼きものにどうやったら鎹が打てるんだろう?
とっても不思議でした。


フィリピンのルソン島の北部、イフガオの浅いお椀です。
ひびが入ってしまったところを、ラタンで綴ってあります。


これで汁ものも大丈夫だったのでしょうか?それとも、ご飯を盛ったのでしょうか?
縁の部分さえしっかり縫ってあれば、割れ目はそれ以上広がりませんが、割れた線の上をチェーンステッチのようにして綴ってあります。
大切なお椀だったに違いありません。


外側から見ると、ドリルかなにかで小さな穴を開けて、綴ってあるのがわかります。


パキスタンの器です。山羊の乳でも入れたものでしょうか。


ラタンで綴り、割れ目には樹脂のようなものを塗ってあります。
せっかく苦労して彫った器が割れたら、絶対に捨てられない気分だと思います。


ガーナ北部の瓢箪(カラバッシュ、かんぴょう?) のボウルです。
ガーナに住んでいたとき、休暇には北部に旅に出ることがありました。
あるとき、そのあたりの村では、模様を彫った瓢箪をつくっていると、友人から聞いて行ったので、誰彼となくつかまえては聞いてみたのですが、誰も知りませんでした。
なかなか見つからず、諦めようとしていたときに、一人の女性が、自分が使っていたものを持って来てくれたのがこれでした。

油を入れていたのか、山羊の乳を入れていたのか、そのときはしっとりと光っていましたが、浸みこんでいたもののせいで、その後何年も、何十年も、特に梅雨時になると激しくカビていました。
そのたびにごしごし洗いましたが、さすがに半世紀も経つと、全然カビなくなりました。


缶詰めの空き缶を利用して、修理してあります。
切り取った缶の底を当てがって穴を開け、その穴に丸めたブリキを貫通させて、両側で叩いてつぶして、リベットにして止めてあります。


缶の底の部分は、わざと上下を非対称に切っているようです。
さらに、ぺこぺこした切り口をなじませるため、釘の先で叩いて、小さな突起模様をつけています。
外側は、割れ目に細いブリキを当てていますが、
 

内側は、鋲を打ったところだけにブリキを当てています。
身近にあるもので、こんな修理ができるなんて、本当に素敵です。

かつて、缶詰めの空き缶は貴重で、容器としてだけでなく、太鼓やカリンバなどの楽器に仕立てたりと、いろいろな用途がありました。
今はどうでしょう?


ソマリアのラクダの首につける鈴です。
やはりブリキ、たぶん缶詰めの空き缶で修理してあります。


木の表面がこんなになるまで使っているのですから、親子代々直しながら使ってきたものかもしれません。




2 件のコメント:

hatto さんのコメント...

金継ぎいいですよね。割れていない陶器よりも、むしろ継がれたもののほうが景色があって素敵ですよね。鎹で継がれた物は、割れた陶器に錐で穴をあけて継ぐのですが、さぞかし根気がいったことでしょうね。私も、金継ぎをやってみたと思ってます。まずは、お皿を割らなきゃ。笑

さんのコメント...

hattoさん
お皿を割る人と暮らしていないのですか?私は暮しています(笑)。
しばらく前に、空洞のあるガラスの蓋を水に浸していたら小さい穴から水が中に入り、出ないので穴を広げようと、ゆっくりゆっくり錐で穴を開けようとしたのですが、結局ひびを入らせてしまいました。小さい穴を広げることさえできなかったのに、何ヶ所も穴を開け、しかも最後は楔を打ち込むなんて、しかも他人の火鉢ですから、驚いてしまいます。
金継ぎ、いいですよね。私は「本漆でない金継ぎセット」でもかぶれてしまいました。でも今はよい金継ぎ師さんを見つけたので、安心してお皿を割れます(てなことはありませんが、笑)。