骨董市で、さわださんの半身不随になっている犬のミルキーにかまいながら、私はなんとなく訊きました。海苔を入れる大きなビンをさっき売っていたし、石けり、ビー玉、おはじきは並んでいるけど、わくわくするような小さいビンはありません。
「あるよ、ほら、風船の型」
指さす箱の中には、櫛団子のような形、枇杷の形、ハートの形などをした、ガラスの棒がいろいろ入っていました。
それはさっき見たけれど、たいして関心もありませんでした。
「これをゴムの液に浸して風船をつくったんだ」
「へぇぇ」
それは知りませんでした。
「このわきのでっぱりは何かしらねぇ?」
「わかんないけれど、たぶん猫で、これはしっぽじゃないかな」
「へぇぇ」
猫と聞くと、俄然関心が沸きます。
「ミッキーマウスなんかもあったけれど、売れちゃった」
「そうなん」
別に、ミッキーマウスは惜しかったというものではありません。
さわださんは、毎週のようにあちこちの骨董市に店を出していて、それぞれに熱い固定客がいます。
まぁ、猫に見えないこともありません。
よく見るとガラスのパーツをあちこちくっつけて形をつくっていて、なかなか手が込んでいました。
ガラス職人さん、こんな手間のかかるものをつくって、ちゃんと食べていけたのでしょうか?
風船屋さん、こんなものを液状のゴムに浸して乾燥させて風船をつくって、ちゃんと食べていけたのでしょうか?
さて、風船の型はどこに置こうか?
土間入り口の上に飾りました。
2 件のコメント:
単純ではない型で凝っていますね。説明がなければ風船の型だなんてわかりません。緑のビンの上にちょこんとネコが座っているようでいいですね~。
hiyocoさん
私も遠目に、ストローかと思いました。「この頃、ガラスビン持っていないね」と言わなかったら、今でも知らなかったことでしょう。
ガラス職人、町工場で汗をかきながらあんなものもつくっていたのですね。ところで今は風船はどうやって作っているのでしょう?あまり身近にあって考えたこともなかったけれど、人生いろいろですね。
最初猫には到底見えませんでしたが、だんだん猫に見えてきました。
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