八郷のこんこんギャラリーで、近藤由巳さんの「羊の布展」が開かれています。
どれも、羊の毛を紡いで糸にし、それを染めて織ったものです。
このショール、裏はほぼグレー一色に見えるので、裏表では別の雰囲気が味わえます。
これは、裏表が同じ色に織られている、薄手のショールです。
茶色の布を二枚合わせたポンチョです。
縁は、帯のように細く織ったものを綴ってあるそうです。
近藤さんの織り物は、仕上げの美しさが目立ちます。
織り物は織っただけでは、縦糸と横糸が交差しているだけ、とくに羊毛で、平織りでそのままショールにしたりするとしなやかさに欠け、風がすうすうと抜けるショールになってしまいます。
かといって、織り目もわからないほどにフェルト化させると、手織りの良さが失われてしまうので、ころあいが大切です。
とくに、フリンジの仕上げの美しさには、目を見張るものがありました。
このポンチョは、布全体の糸の始末がきれいなだけでなく、模様帯の部分の糸の始末は編んであって、遊び心いっぱいです。
布を織ると、二方に「みみ」ができますが、織りはじめと織り終わりは、ほつれないように経糸(たていと)を始末しなくてはなりません。
服などに仕立てる場合は、切り端は折ってくけますが、ショールや毛布など布のまま使う場合は、折ってくける、経糸に撚りをかけてフリンジにする、マクラメ編みで七宝に編むなど、いろいろな始末の方法があり、端の始末でまったく表情の違うものができます。
上からガーナのエヴェのケンテ、ブータンの布、タイ北部のシーツ |
日本の手ぬぐいは、普通は切りっぱなしのままで使い(私は端をくけて使いますが)、洗濯を何度もした後、糸が絡まってほつれなくなった様子が好きという方もいらっしゃいます。
上の二枚はタイのショール、赤いのはカンボジアの絹のクロマー |
切りっぱなしの次に簡単な始末は、経糸を何本かまとめて結ぶ方法です。
上はティモール島のイカット、下はタイのパッカマー |
近藤さんの布もこの方法で始末してありますが、羊の毛なので、もう一手間かけて撚った糸をフェルト化させて、ほどけないようにしてあります。
カメルーンの絞り染めの布 |
経糸が太ければ、同じ方法でもフリンジの感じも変わります。
さて、これはインドネシアの木綿のイカットですが、フリンジの先が結んでありません。
羊の毛ではあるまいし、普通は解けてくるものですが、何か、漆のような天然の接着剤を、先端に染み込ませているのかもしれません。
このラオスのショール、パヴィエンは変化球です。
薄い布、したがって経糸も細いので、経糸でそのままフリンジをつくっても見栄えがしないと思ったのか、端は三つ折りぐけにして始末し、それに別の太めの糸をつけて三つ編みにしています。
ティモール島のイカット |
布を大切に思う織り手は、織ったあとも、一手間も二手間もかけるものです。
4 件のコメント:
「くける」という言葉を初めて目にしたのですが、すぐ実家に合ったくけ台という折り畳みの直角に広がる棒を思い出しました。先端に付いているのが針山だとわかっていましたが、使い方を知らないし、母が使っているところも見たことありませんでした。くけ縫いは「裏に縫い目がでないようにまつる縫い方」であってます?くけ台は縫う時に布を引っ張るために使うのですね。
後付けのフリンジが可笑しかったです。
hiyocoさん
じつは私もあやふやでした。まつるのか、くけるのか。
でも、三つ折りぐけという言葉があったのを思い出してくけるにしました。まつるでもいいでしょうね。最近はどちらも半死語ですが(笑)。
その昔、洋裁をして最後に裾をくけるときなど、母は必ずくけ台を使いましたが、私はなくてもあってもどっちでも同じようでした。どっちでも同じと言うことは、大したことないというのと同義語ですが(笑)。
そうそう、平織りだとフリンジが結構閑散とするので、豪華に見せたいと思ったのでしょうね。ラオスには経糸を詰めた織物はありません。その代わり、模様綜絖を使った豪華な紋織りがありますが。
フリンジ、端の処理にもこんなに色んな手法があるんですね!
今度からいろんなフリンジを見るのが楽しくなりそうです。
akemifujimaさん
そうそう、フリンジ一つで表情が変わってしまいます。
ショールだけでなく絨毯やキリムなども端の始末には気を使っていると思います。絨毯は経糸に麻糸を使い、そのまま(麻糸が見える状態)にしてあるのも多いのですが、私はそれが嫌で、家で使っているものは、別布でくるんで麻糸が見えないようにしています。
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