昨日、東北の、麻の野良着のことに触れましたが、以前、私の持っている木綿の野良着については書いたことがあったと思い、過去の記事を調べてみました。
ところが、民族衣装のラベルでも、布のラベルでも見つかりませんでした。ラベルをつけ忘れていたかもしれないと思いながら、さらに探したのですが、ない!
ということで、いま一度UPしてみることにしました。
これは、いつ買ったか、どこで手に入れたかも忘れた、古くから着ている、刺し子の袖なしです。
背中が暖かければ、袖がなくても寒くない。着て暖かく動きやすい、便利な袖なしです。直線裁ちで、肩が裃のように尖るので、私が身体に添わせるように斜めに縫い直してあります。
藍染めの木綿布を何枚か重ねて(少なくとも3枚以上)四角に刺したもの、左が表、右が裏で、裏には糸の端が見えます。
前だけでなく、背中にも絣布をあてています。
御徒町駅近くの、湯島天神下交差点の角にあった、小さなお店で見つけました。まだ着物地がそう巷に出回ってなかった1990年代初頭、素敵な布を見つけるのが上手な女性店主と気が合って、買うだけでなくよく遊びにも行きました。しかし、知り合って数年後、彼女は病に倒れ、店は閉じられてしまいました。
裾だけ、布の厚みを薄くして、たぶん2枚重ねで刺し子をしています。そのわけは、座ってみるとすぐわかります。太ももの下あたりで、布がもたっとしません。気持ちよく座れました。
袖先は手首までは来ない、五分袖くらいです。
襟は、黒いビロードでカバーしてあります。
ブログ「旅するマーケットへの道」より |
絞り布の刺し子は、その時初めて見たのですが、のちによくつくられていたと知りました。
秋田県の、南外民俗資料交流館に似たものが展示してあります。また、青森県でつくられ、津軽絞りと言われていたという資料もあります。
しかし、背中は全く違う、松葉を散らした絞りになっています。
家庭で絞ったのではなく、絞って藍で染めた反物か、あるいは所定の長さに短く切った布が、刺し子の上着の材料として、東北一帯に流通していたのかもしれません。刺し子の上着以外に、この手の絞りを見たことはありません。
絞り染めのない上着が、かなり着込んだものであるのに比べて、こちらはほとんど着た形跡のない、新しいものでした。晴れの日用に、取って置いたものだったのでしょうか?
絣の袖には刺し子が施されていません。
2 件のコメント:
「東北の野良着」で、NHK美の壺「青森のBORO」(録画したDVD)を観直しました。番組は、ボロの素晴らしさを再発見した民具研究家田中忠三郎のコレクションや文章の紹介で構成されています。衣食住とは、何故衣が最初なのか。極寒の北国の人間にとって、寒さに対する恐怖から守ってくれる衣は命そのものだったから。木綿が貴重で、目の荒い藍の麻布を何枚も重ねて寒さに耐える衣類や布団、敷物を作った。女性たちは、機能だけでなく、美しさを求めて貴重な木綿糸で刺し子を施した。裂き織も紹介されています。
猛暑の最中、ピンとこない話ですが、衣や布を見直すきっかけとなりました。
(浅草にあった ボロの美術館が閉館したのは残念。)
reiさん
このくそ暑い時期に、寒さをしのぐためにつくった野良着を紹介してしまいました。季節外れでしたね(笑)。
確かに、厚くすればいいんでしょうというだけでなく、こぎん刺しも刺し子も美を追求しています。麻布に麻の葉模様に刺し子をした布の美しさ、とても真似できるものではありません。
ボロと言えば、近所の織物をしているKさんにペイズリーの本をお借りしたとき、「ボロ展」のカタログも貸していただいて、楽しく拝見したことがありました。福島のあたりまで、Kさんは見に行かれたそうでした。
キルトと言いぼろつなぎと言い、どんな小さな布も生かすわざは、洋の東西を問わず素晴らしいですね。
NHKのオンデマンドで検索してみましたが、「美の壺、青森のBORO」はとっくにやっていませんでした(笑)。
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