2020年8月20日木曜日

オヤの見本帳

 

akemifさんが、『縁飾り(オヤ)の見本帳』(石本寛治、石本千恵子著、高橋書店、2016年)を貸してくれました。
『オヤの見本帳』には、トルコの手仕事の歴史、生活におけるオヤの位置、編み方の種類、モチーフの種類などなど、オヤに関することが、詳しく書かれています。

刺繍された男性の帯

アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ要所に位置するトルコは、その昔から、交易の要所であり、東西文明を結ぶ交流の中心地となってきました。
13世紀末に、アナトリア地方にオスマントルコ朝が建国されると、宮殿の中のハレムで生活する女性たちが、宮殿の工房で織られた綿や麻の布に、絹糸や金糸・銀糸で刺繍して、皇帝に献上したり、自分の身の回りを飾ったりしました。
それが市場(バザール)の職人たちに伝えられ、都市だけでなく農村でも盛んに刺繍がされるようになりました。


刺繍に続いてつくられるようになったオヤですが、いつごろからつくられるようになったか定かではありません。しかし、地中海地域で、古く(紀元前2000年ごろ)から盛んにおこなわれていたレース編みを取り入れ、自然の花々を模して、トルコ独自のオヤを完成させました。


オヤは、イスラムの女性には必需品のスカーフと、ぴったりマッチしたようでした。


オヤには、先のとがった一本針で編むオヤ(イーネオヤ)、かぎ針で編むオヤ(トゥーオヤ)、ほかにビーズを使ったオヤなどあります。
私はかねてより、スカーフに、どうしてもっと密にオヤを配置しないのかと訝しく思っていました。


しかし、この本の中の、実際にオヤのスカーフをかぶっている女性の写真を見ると、モチーフの数は多すぎず、少なすぎず、ちょうどよいことがよくわかりました。全体がオヤよりも、間隔が空いている方が素敵に見えます。



イーネオヤの、針を通しては結び目をつくっていく編み方は、編んだことのない者にとっては気の遠くなるような作業に見えますが、トルコの女性たちにとってはきっと、考える前に手が動いている、楽しい作業に相違ありません。


オヤとともに、スカーフに施された木版も気になっていましたが、『オヤの見本帳』に、版木の写真が載っていました。
オヤとともに、スカーフの表情を決める、大切な木版です。


薄い色の生地に濃い色の木版染めは理解できますが、生地を濃い色に染めて薄い色で模様を出す場合もあったようです。
写真を見てもよくわかりませんでしたが、色留めの糊を使っていたのかもしれません。

ギョネンのオヤ市場

オヤは、今でも盛んにつくられたり売られたりしているようで、ギョネン地方では、毎週市が経っているようです。
この女性もがそうしていると思われますが、外出時は、薄い生地のスカーフをかぶった上から、もう一枚厚手のスカーフをかぶります。


これは、4辺ではなく1辺だけの素敵なオヤの写真です。
手仕事のある生活、手仕事を活かす生活、そんな生活がいつまでも続いて欲しいものです。









9 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

春姐さん今日も思考停止になるような一日です。
ブログを楽しんで観てますよー

さんのコメント...

昭ちゃん
ありがとう。朝ちょっと草を刈って、買い物して、お昼食べて、いまは休憩中。
室内からギラギラ光る屋根を見ながら、そのただ中にいつ出て行くか、出ていく力を今貯めているところです(笑)。

akemifujima さんのコメント...

この本、春さんに読んでもらえて、喜んでいるだろうなぁと思います。

私は植物図鑑を見るかのように楽しかったんですが、こぼれ話も面白くて、
この本の中で印象に残っているのは、
・女性たちが集まって、おしゃべりしながら、オヤに励む
・女性が男性への意思表示にもオヤを使う(唐辛子は怒っていることを示す)
とかです。今でもそうなのかなぁ・・・って。
インスタで'oyalar'と検索すると、いろんな作品がたっくさんアップされてくるので、
今も女たちが手仕事に打ち込める”ゆとり”があるのかなぁ・・・などとも思います。

それにしても、暑いですね。暑さ寒さも彼岸まで、って、もう時代遅れですかね。
昭ちゃん、思考停止ではなく、川遊びに行きたいなぁ・・・などど、考えてしまうほど、
目の前のことに集中できない暑さです。(笑)

akemifujima さんのコメント...

昭ちゃん、思考停止ではなく、川遊びに行きたいなぁ・・・などど、考えてしまうほど、
目の前のことに集中できない暑さです。(笑)
暑さ寒さも彼岸まで、って、もう時代遅れですかね。

昭ちゃん さんのコメント...

あけみさんゆっくり報告が出来ずごめんなさい、
編集中の博物館会報が来月の予定なので今暫くお待ちを
お送りします。
あー  彼女の頭を撫ぜたいなー!!!

さんのコメント...

akemifさん
タイを見ていると、文化が流れゆく国を感じました。あちらから来たものも、こちらから来たものもじっくりとどまらず、したがって発酵もせず流れゆき、次の波に覆われてしまいます。
トルコも、まさにそんな、文化の行きかう位置にありながら、いろいろなものがじっくりと発酵している、どうしてだろうと、興味を持たずにはいられません。
パレスチナにかかわり始めたころ、「イスラエルに占領される前はどうなっていたの?」なんて軽く訊いたとき、普通に「オスマントルコに支配されていた」というのが知ったときの驚き!歴史でしか習ったことがないものが現実である不思議さ。
イランはトルコと似た位置にありながら、伝統的なものは失われてしまっているという話です。それを分けるのは何だろうかと思わずにはいられません。いろいろな国に行った友人のカメラマンが、」世界で一番好きな国はイランだと言っていたので、いつかイランに行ってみたいと思っています。トルコではなくて(笑)。

af さんのコメント...

春さん、文化が流れいく国と発酵する国って面白い表現ですね。本当に不思議です。
その違いの根源にあるものが分析するため、イランに行ったついでに、帰りにトルコに寄って来てください!

af さんのコメント...

昭ちゃんたら~、アツアツですね。
編集も暑さも一段落したら、みてみてください!

さんのコメント...

akemifさん
いつ、イランに行けるかなぁ(笑)。
ウズベキスタン、パレスチナ、行きたい国がイラン以外にもあるけれど、いつ行けるかわかりませんね。