2009年12月20日日曜日
漁労の籠 東南アジアの国々
1990年、まだラオスが鎖国を完全に解いていないころのことです。
主要幹線道路は舗装されてなくて、借りられる車には冷房がついていませんでした。土煙をもうもうと上げて一日走れば、髪も顔もおかしいほど、赤土で真っ赤になりました。
そんなころ、一週間ほどラオスを訪問しました。
ある村からの帰り、前を、米袋やその他の荷物を山になるほど満載して、しかもその上には大勢の人を積んで、よたよたと走っているトラックがいました。袋のてっぺんには、たくさんの漁具が結びつけてあって、悪路でトラックが揺れるたびに、大きく揺れていました。早く追い抜かさなくては、土煙で息もできません。
きっと誰かが漁具を売りにヴィエンチャンに行くのだと思った私は、追い抜いた運転手さんに頼んで、トラックを停めてもらいました。そして、聞いてみると、売りに行くのではなくて、乗客の一人が漁具を買って帰るところでした。
でも、「一つわけてあげてもいいよ」と、快くわけていただいたのが、この筌(うけ)です。
それ以来、何度かラオスに行きましたが、二度と同じ漁具にお目にかかる機会はありませんでした。
メコン川は、源流中国から、ビルマ、ラオス、タイ、カンボジアを通り、ヴェトナムで海に出る、全長4,600キロの大河です。
メコン川は、カンボジアでは、北から南へと国土を貫いて流れています。雨季と乾季の水位差は、8メートルにもなるので、雨季には川の水は、田んぼや道路にまであふれ出し、乾季には車で行ける地域でも、雨季には船でしか行けないところが、たくさんできます。
プノンペンを起点にして、北西へ、メコンの支流のサップ川が流れ、トンレサップ湖へと続いています。実はトンレサップ湖はメコン川の巨大な遊水地です。ですから、雨季がはじまり、流域に降った水を集めてメコン川が増水してくると、サップ川の流れはメコンから湖の方へ、そして、雨季が終わると、湖からメコンの方へと、逆に流れます。
メコン川の流域の人々もそうですが、サップ川の流域の人々も、水位に合わせて、農業を営んだり、漁業を営んだりしています。
雨季にサップ川流域の村を訪れると、家は自然にできた堤防の上に一列に並んでいますが、雨の多い年には、高床の柱が水に浸かって、家はまるで水の中に建っているように見えます。
そんな村々を訪れたときのこと、あちこちに川エビ漁の筌が高く積んでありました。増水時には使わないものなのでしょう。村の人にお願いして、一つ貰ってきたのがこれです。
川エビ漁の筌だけではなく、うなぎ捕りの、節間の長い竹を切っただけの筌も見かけました。次の村で聞いてみよう、まだ次にしよう、と先送りしているうちに、とうとうそちらは貰い損なってしまいました。一定の地域でしか使ってなかったのです。
雨の日の、細い川舟での移動は、つらいものがあります。ビニールシートをすっぽり被って、首を下げた同じ姿勢で、ひたすらエンジンの音と、シートを打つ雨の音だけ聞いています。3時間も行くと、身体がかちかちに固まってしまいます。
私の好みを熟知する友人が、マレーシアから買ってきてくれたものです。典型的なマレーシアスタイルの筌です。
タイの漁具と、上記、すべての漁具に共通しているのは、川で使うということです。あまり深く考えたことはありませんでしたが、こうした竹製の漁具というのは、川漁で発達したもののようです。
マレーシアの筌の蓋は、柔らかな木でできています。
そしてこれが底。魚のいるところではどこでも、漁具つくりの名人が育ったのでしょうね。
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