だるまは紙でできていて、上部は空洞、下の方に土が詰めてあって、倒しても必ずもとのように、座った姿に戻ります。
このような縁起もの(おもちゃ)は、起き上がりこぼしと呼ばれ、「七転び八起き」 の意味を込めて、おめでたいものとされています。
日本各地ではだるまだけでなく、いろいろな張り子の起き上がりこぼしがつくられ、正月の市などで売られてきました。
紙細工の張り子は、日本だけでなく、中国、インド、ビルマ、スウェーデン、メキシコなどでも見られますが、起き上がりこぼしが見られるのは、中国と日本だけです。
一方ロシアには、木をくり抜いてマトリョーシカのような上下をつくり、重石と、音源(オルゴール)を中に固定させ、それを閉じてつくる起き上がりこぼしがあります。マトリョーシカは十九世紀末に誕生しましたが、起き上がりこぼしはそれ以前からつくられていました。
赤ちゃんの友、セルロイドの起き上がりこぼし(roly-poly)は、セルロイド全盛期には日本で盛んにつくられましたが、今では廃れてしまいました。ところがロシアでは、今でもつくられています。
オルゴールが中に入っていることを考えると、セルロイドの起き上がりこぼしは、まずロシアでつくられ、ヨーロッパに広く出回っているものを、日本が真似たものと思われます。
ではいったい、伝統的な起き上がりこぼしは、どこで生まれたものでしょうか?
もし、中国起源で、ロシアに行ったものは、ロシア人の得意とした木でつくられ、日本では、そのまま張り子の形でつくられたとしたら、たかが起き上がりこぼしにも、人々の交流の歴史が見えて来ます。
ロシアには、各地に起き上がりこぼしがあるようですが、これは北の町、アルハンゲリスクの伝統的塗りもの、メゼーニ塗りの起き上がりこぼしです。
メゼーネ塗りは、きまった模様が特徴です。
馬は生命力の象徴で健康を、水鳥は先祖の霊がいつも近くで見守っているという意味を表しているそうです。
やはり北方アルハンゲリスクのボレツカヤ塗りです。
美しい彩色と、すべすべした手触りにただうっとり見入ってしまいますが、転がした時のからんころんという優しい音色も、何ともいえず心地よいものです。
全体に彩色してあるボレツカヤ塗りの方は見えませんが、部分彩色で生地色を生かしているメゼーネ塗りの方は、上下部分のつなぎ目がかすかに見えています。
マトリョーシカと比べてみるとほぼ同じ形で、上部分のてっぺんから縁までの高さもほぼ同じ、ただ、マトリョーシカには台座がついているので、その分背が高くなっています。
後ろから見ても、
上から見ても、
下から見ても、素敵な起き上がりこぼしです。
ロシアでも起き上がりこぼしは赤ちゃんに贈って、その健やかな成長を願うもののようです。
2 件のコメント:
春さんいつもながら微笑ましい民芸品と詳しい解説を楽しんでおります。
渋柿が落ち葉の上に、、、冷たくて美味しい季節になりました。
ほとんどカラス用ですが(笑い)
昭ちゃん
我が家はなんだか柿と相性が悪くて、元からあった木、植えた木いろいろあるのですが、どれも生りません。やっとなって喜んでいたら、草刈りの時間違えて刈ってしまった後から出てきた、寝ぼけた味の柿だったりして。
この町に来た当初は、知らない家の渋柿を見て、「ください」なんてもらっていたけれど、今ではなんだかそれもできません。
というわけで、11月に入ったら直売所で渋柿を買ってつるすつもりです。ところが、渋柿は枝をつけて切るので手間がかかり、甘い柿と同じくらいの値段がします。でも、干し柿はおいしいですからね。
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