仙台の堤人形の猫とネズミです。
鯛のうろこが丁寧につくられた型を使っています。
猫とネズミのモチーフの、一番しっくりくる舞台は米俵だと思われますが、なぜ鯛に猫とネズミなのでしょう?
猫はネズミの方を向かず、まったりくつろいでいます。
そして、ネズミも慌てずのんびりしています。
お米を食べたり、蚕にいたずらしたりするネズミを退治するありがたい存在として、猫は招き猫やら座り猫やら、数々の土人形や張り子になってきました。しかし、ネズミはどうして人に愛されてきたのでしょう? 干支にもなっています。
俵乗り、福ネズミの張り子です。
ネズミはお蚕さまの天敵ではあるけれど、驚異の繫殖力で、子孫繁栄の象徴でもありました。
江戸時代末期には、絹や木綿にいろいろな色が染められましたが、
「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と言われ、ネズミ色は100もありました。色としては「灰」が身近だっただろうに、言葉としては、「りきゅうはい」より「りきゅうねず」の方がおしゃれです。
桜鼠、梅鼠、桔梗鼠、山吹鼠、柳鼠、千草鼠、港鼠、利休鼠、暁鼠、遠州鼠、銀鼠、江戸鼠、鴇鼠、藍鼠、紺鼠、玉子鼠、小豆鼠、紅消鼠などなど、江戸の染師さんたちは新しいネズミ色を生み出すために、腕を競いました。めでたい鯛に加えて、子孫繁栄のネズミと、そのネズミにいたずらはさせないぞと見守る猫、もしかしたらこの土人形は「めでたい尽くし」だったのかもしれません。
そして、鯛はめでたいだけでなく、赤いので子どもの疱瘡除けにもなっていたかもしれません。
そして海は?
日本は西欧からFar East、極東と呼ばれています。東のどん詰まりということですが、いつだったか長男が海を見ながら、
「日本人は西は向いてこなかった。いつも陽ののぼる太平洋を向いて生きてきた」
と言ったことがありました。
なるほど、海もめでたいの一部だったのかもしれません。
2 件のコメント:
芳賀佐五郎作でしょうか、キャッチーな意匠が目を惹きますね☆
多くの場合、鼠は大黒さまの暗喩ですから
鯛と鼠で二福神の意味にならないことはないですが、
トム&ジェリー状態のこの様子では、大黒様の関連ではなく、
春さんが仰せの通り、
蚕神の神使としての猫が、悪さ鼠を取り締まるの図でしょう。
「猫さんの手も借りて、養蚕業安泰、お家繁盛でありますように」
という願いが籠められているように感じます。
鯛が海中ではなく、大胆にも波の上を進む図にも
順風満帆の船出のイメージが重なるようです。
単なる妄想で恐れ入ります。
茶々丸さん
たいていの窯元は一度訪ねたきりですが、縁あって芳賀家には、21世紀になってからですが、二度もお邪魔しました。そこいらじゅうが華やかな色にあふれていて、お雛様の絵付けをしされていたときには、下塗りをする職人さんもいらっしゃいました。
そうでしたか。鼠が大黒様の暗喩、鯛に鼠で恵比寿大黒とは知りませんでした。イザベラバードが東北を旅した時、どこに行っても恵比寿大黒があって、日本人は即時ご利益しか考えてないとの感想を漏らしていますが、そう単純なものでもなかったでしょうね。
郷土玩具には、一つ一つに信仰や願望が宿っているところが心惹かれるところです。
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