インド(確かニューデリー)の街角の店に、無造作に重ねてあった手描きの絵です。
パラパラとめくって、1枚だけ買ってきたもので、ミニアチュールとは言えない、インドではありきたりの売り絵でしたが、
バンコクの額縁屋さんで、周りにシルクを配して、割った竹を金色に塗った額縁をつくってもらい、高待遇(?)しました。
さて、『インド ミニアチュール幻想』(山田和著、文春文庫、2009年)で、山田和さんは各地に古いミニアチュールやミニアチュールの作家さんなどを訪ねていらっしゃいます。
ミニアチュールを描く画家は、手漉きの紙を使います。
手漉きの紙は石板の上に置き、木の棒の真ん中に瑪瑙(めのう)をはめ込んだゴーターと呼ぶ道具でこすって、紙の表面を滑らかにします。
左端がゴーター、そしてヤギの毛の筆、リスの尻尾の毛の筆、などなどです。
細い細い筆をつくるために、画家は自分でリスを捕まえて尻尾の毛を抜いて筆をつくったります。
絵を描く順序は決まっています。ゴーターをかけた紙に、朱で最初の線描きをします。それからその上に絵の具を乗せやすいように、白色の下地を全体に塗り、乾いてから赤、黄、黒を混ぜてつくった褐色の絵の具で、最初の線描きを頼りに完全な線描きを仕上げます。
次に色を塗ります。最初は空、次いで建物、地面、木や草、そのあとで人物の着色をします。そして最後に、絵の枠を描きます。
絵の具は鉱物性、植物性、動物性のものをすりつぶして、粉にして使います。
例えば黒、黒も一色ではないので、炭化させてつくったり、鉄の容器に入れて放置して酸化させたり、ランプの上に石板を置いて煤を付着させたものをこそげ取ったりと、いろいろな黒をつくって使います。かつては絵の具は、その家、その家の秘伝でした。
牛に半年間マンゴーの葉っぱだけを食べさせ、その尿を集め、水分を飛ばしたつくった輝くばかりの美しい黄色い絵の具もあります。牛の健康上の問題か、今はこのつくり方は禁止されているそうです。
出来上がった絵は、今度は下向きに石板に乗せて、裏面をゴーターでこすって、絵の具を落ち着かせ、絵につやを出します。
ミニアチュールは、かつて写真のないころ、マハラジャやスルタンにもてはやされました。
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「ティラカヤット・ゴーヴァルダンラールジーの肖像」19世紀末 |
上は、古い時代の肖像画です。
私の持っている絵は、手描きとはいえただの売り絵ですが、それでも細い細い筆を使って描かれています。
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「クリシュナ神とラーダー」19世紀後期 |
そして、こちらが正真正銘のミニアチュールです。
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