ターシャ・テューダー(1915-2008)の本の中で好きなのは、『暖炉の火のそばで』(トーバ・マーティン文、リチャード・W・ブラウン写真、食野雅子訳、メディアファクトリー、1996年)です。いろいろな手仕事が満載されています。
身軽く生活することにあこがれながらなんでも欲しがって「もの」を増やしてしまう自分を、常々、心の片隅で後ろめたく思っていたところ、あの年で、こんなにたくさんのものに囲まれた生活をしているターシャ・テューダーの存在を知ることは、大きな安心と共感をもたらしてくれたものでした。
ターシャは、息子さんに建ててもらった家で、たくさんの古い道具や家具調度、そして手づくりのものと暮らしていました。その生活は丁寧で、真似しようとしても真似できるものではありませんが、織り機が眠っているけれどもう一度織り物をやってみようかと思ったのも、ターシャの生活を知ったからだったかもしれません(まったくできてはいませんが)。
ターシャはいろいろな籠もつくっていて、興味深いものでした。
アジアやアフリカの籠にはなじみがありましたが、当時の私はヨーロッパ(スタイル)の籠にはほとんど縁がありませんでした。
とくにこの形の籠、実物を見てみたいなと思っていました。
21世紀になって、ネット時代が到来して世界は狭くなり、いろいろなもの、ヨーロッパの籠さえも見たり手に入るようになって、その思いの一端は満たされたされたことでした。
ラトビアの、持ち手のつけ根を四角く編んだ籠を初めて手にしたときは、感慨深いものがありました。
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フランスの籠 |
持ち手のつけ根にひし形に施された飾り編みは、補強も兼ねたヨーロッパ伝統のデザインです。
ラトビアのミニチュアの籠は、外皮を剥いで、テープ状に削り揃えたもので編んでいて、丸い枝のままで編んだフランスの籠より、より精巧にできています。
大きい方は直径約8センチ、小さい方は直径約6センチです。
と、ミニチュアの籠は持っているのに、また増やしてしまいました。
楕円形の籠は、長径約10センチ、短径約7センチです。
手が生み出した、美しい出来栄え、古い籠ほど色が深まっています。
追記:
7月16日にUPした「麦わら細工のホタル籠」の中に誤った記述があったので、文末で訂正しておきました。
2 件のコメント:
>「もの」を増やしてしまう自分を、常々、心の片隅で後ろめたく思っていたところ
1冊の本には、著者の知識、経験、考えなどぎっしり詰まっています(そうでないものもありますが)。出版に至るまでも多くの人の手が必要です。読ませてもらえる事が有り難いです。
「もの」にも形、材料、技術、歴史等が詰まっています。その価値を知る人がコレクションして大事にしてくださる事で後の人々もそれらを知る事ができます。日頃、建築も歴史を体感できるものとして維持する意義があると考えています。
reiさん
コメントありがとうございます。そう、本や「もの」のおかげで、なんと豊かな人生を送れていることでしょう!
今日、九州からきていて、ちょっと出かける息子を駅まで送っている車の中で、葛で荒れた景色を見ながら、里山がきれいだったころの話をしていました。すると、どこもかしこも箒で掃き清めたような昔の景色を思い出して、二度とあの美しい風景には返らないのかと感傷的になってしまいました。岩手の曲がり屋、漁村のたたずまい、掛川の赤い土壁などなど、懐かしいけれど記憶の中だけです。
家や集落、里山など大きいものは、意義があってもつないでいくのが難しいですね。
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