2018年3月12日月曜日

播金


益子に行く用事があり、古本・古家具・古雑貨の店、「内町工場」に寄りました。
本が充実しているので、最近は本を見るのにほとんどの時間をさいてしまいます。もっとも、雑貨を見るには、本ほど時間がかからないのは当たり前ですが。
で、播金(はたがね)を買ってきました。とくに大きい方の播金の、ねじのつくり方が面白いのです。


左は、ねじにつまみを被せ、留めてある、つまり二つの部材をくっつけたものです。
右は、まさか一塊の地金からつくり出したものではないでしょう、ねじとつまみが一体になっています。


新しい播金(と言っても1970年代のものですが)のつまみは、作業台や床に近いところで使うとき、つまみが邪魔になったりしないように、可動のバーがついています。しかもバーが長いので、軽い力で締めることができます。
現在は、もっと使いやすいクランプや、強力なクランプを使うので、私もよくよくクランプたちが出払ったときでないと、播金に手を伸ばしませんが、今でもつくられ、売られているようです。

いったい播金はどこでつくられているのだろうとネットで調べてみると、ほとんどは、新潟県の三条でつくられてきたようです。
1924年に若干23歳で独立・起業した長谷川藤三郎氏が考案し、彼の会社のマルト長谷川工作所で制作され、「KEIBA」マークで売られました。
マルト長谷川工作所で当初製作していたのは、大工道具である「締めハタ」が中心でしたが、より近代的なペンチなどの作業工具に魅せられた藤三郎氏は、そのような近代工具を自社で生産したいと、1932年には、新潟県ではじめて「スプリングハンマー」を導入しています。
スプリングハンマーの導入により、それまで手で金属を鍛えていた作業が機械化され、生産性は大幅に向上したそうです。


マルト長谷川工作所の会社紹介に乗っていた写真です。
この中で、つまみがハート形のものは、一方の留め金をねじではなくて、別の方法で固定するようにつくられているので、より古いものかもしれません。
もっとも、新しいクランプもこの方法、穴が押されるほど斜めになって動かない方法で留まります。

播金には限界があります。


厚みの薄い板を接合するとき、絞めつけることはできますが、太いもの、奥行きのあるものには使えません。


例えば、4寸角の柱に、間柱材を釘打ちするために仮止めしたい時など、奥行きが足りなくて、使うことができません。
マルト長谷川工作所の会社紹介には、「大工道具」と書いてありましたが、播金はおもには、家具屋さんや建具屋さんが使ったものだったのでしょう。


1932年にスプリングハンマーを導入したとありますが、この、一番古そうなつまみのものは、もしかしたら手で打ったものでしょうか?
手で打ったものだったら、とっても面白いのにと思ってしまいます。





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