届いた荷物を開いてみると、おまけと書いて小さくなった土錘5個も入っていました。優しい出品者さんです。
大きさは5.5センチほど、小さいのはより長く波にもまれて小さくなったと考えてよさそう、孔の大きさはぼぼ変わりません。
これまでほとんどメルカリを利用したことがありませんでしたが、そんなことができるのか、届いた荷物には送り主の住所も名前も記載されていませんでした。商品サイトにも県名など書いてなかったので、残念ながらどこの浜で拾われたものかわかりません。後で気づいて問い合わせようとしたのですが、すでに問い合わせも受け付けていませんでした。
さて、土錘をSNSで検索するとたくさんの出土品が出てきます。
上は千葉県我孫子市の下ヶ戸貝塚から出土したもの、左の5個が石錘で、右の8個が土錘、縄文時代後期から晩期のものです。
この形から考えて、最初はただの石をおもりにしていた、そして紐を括りつけ易いように石に溝を彫るようになり、加工しやすい土でつくるようになっても、しばらくは穴を開けないで石でつくっていた時と同じように土錘に溝を切っていたのではないか、と思いました。
でも、『新編・漂着物辞典』(石井忠著、海鳥社、1999年)を見ると、そう単純なことではありませんでした。石錘と土錘は縄文時代から昭和まで、ずっと併用されていたようです。滑石製の錘は、軟らかいので加工しやすく、蝋性があって滑りやすいので、海底が泥地でも沈子が滑っていくことによって漁網が泥を噛むことがなく、曳き漁法の沈子として適していたそうです。
『 海=両津湾と加茂湖の漁業』という新潟県両津市郷土博物館が、1982年に編集・発行した展示解説冊子には、両津湾のスケト・タラ、イカ、シイラ漁、加茂湖の汽水魚や貝類の漁労方法や使われた漁具などが載っています。
冬の日本海は北西の季節風が強く、冬はしける日が多くなりますが、大佐渡の山並みが季節風をさえぎる両津湾では、冬でも漁業ができ、天正(1573-1592年)のころから、スケト・タラのはえ縄漁が行われてきました。
はえ縄漁について詳しい漁法の説明がありますが、錘は石です。季節によって魚が泳ぐ深さが違うので、熟練した漁師たちは錘の重さで網の深さの位置を調節しました。はえ縄(スケト縄)のギバ(建縄)の先端にはギバイシという重い錘を使い、先端以外の網の裾にはテイシという沈子を並べて下げました。
このギバイシには、サイズが表記されているのですが、目をこすって見直してみても、高さは1700、巾が1100としか読めません。
「嘘でしょう! そんな大きな石を小さな船の中で使えないよ」
と思うのですが、両津の郷土博物館に行ってみないと真意のほどはわかりません。ちなみにテイシの方は高さ94、巾70、厚み53と書いてあるので、単位がミリとすれば想像できる大きさの石です。
余談ですが、浮きは、ギバイシの上にはギバダルを使い、ガラス浮きや木浮きも使いました。
また、トビウオ網やシイラ漁にも、石錘が使われていました。
さて、土錘です。
大阪府大園遺跡から出土した土錘は、古墳時代のものです。
神奈川県鎌倉市の由比ガ浜南遺跡からの土錘は、いろいろな時代のものが混じっているようです。
福井県田名遺跡から出土した、奈良・平安時代の土錘。
神奈川県横須賀市浦郷町の鉞切遺跡群から出た土錘は、真ん丸です。
そして、大阪市住吉区の遠里小野遺跡(おりおのいせき)から出てきた奈良・飛鳥時代の土錘を含む素焼きの漁具です。
いろいろな形の錘がありますが、棒状土錘は小型の刺し網漁用で、口径3ー5センチの釣り鐘形をした小さい壺は、漁網のおもりではなく、イイダコを捕るための壺です。壺を海底まで沈めておき、タコがその中に潜り込んだところを捕らえました。
いずれにしても、土錘は日本各地で、縄文時代から昭和までの長きにわたって、形や製法を変えないでつくられてきた、稀有な道具だったということができます。
こちらは栃木県真岡市の古家具屋さんを訪ねたとき見つけた、近代の土錘です。ただし型を使った大量生産品ではなく、手びねりで成形したものですが、高温で時間をかけて焼き締めているので、漁師さんが片手間で、簡易窯や浜で野焼きしたものではなさそうです。
海でエージングが進んだのも素敵、固く焼かれていて重い錘も素敵です。
ところで、2011年の原発事故の後、一時避難していた伊豆の海岸で拾った土錘があります。
同じ浜で拾ったので、使い古した網を焼いたりする場所だったのかもしれません。
ひょうたん型の土錘はあまり見ないらしいので、漁師さんの手づくりではないかと推察されるものです。
久しぶりに取り出してみたら、同じところで拾ったと思われる、真っ黒い繭のような形をしたものも出てきました。
石ではなく、土で成形して焼いたものです。孔はあいていません。
14年前にはまったく気づかなかったのですが、これも土錘でしょうか?
7 件のコメント:
おはようございます。
土錘はずいぶん昔から作られていたんですね。
イイダコの壺はなんでも鑑定団で初めて知りました。
メルカリの商品の発送元は、荷物の番号から運送会社のサイトで検索すれば、受付けした集荷所くらいは分かるかも。
写真を見て、以前千葉の白浜で拾った土錘にそっくりだと思いました。春さんが買ったメルカリのサイトを見ると発送元が千葉になっているし、他の出品も南房総で拾ったと書いてあるので(出品者のアイコンをクリックすると見れます)、千葉で間違いないかと。
私も先日初めてメルカリを利用して2回履いたスニーカーを売ってみたら、交渉なしに翌日売れてびっくりしました。匿名発送もなんだか不思議ですよね。久々にフリマの楽しさを思い出しました。ただ、売れば売るほどメルカリが手数料10%で儲けるのが実際のフリマと違うところです(苦笑)。
かねぽんさん小さいころはよくイイダコを食べていましたが、もう何十年も食べていません。あんな小さい壺に入れるほど小さかったのでしょうか?
メルカリはめちゃくちゃわかりません(笑)。
hiyocoさん
その人、ほかにも出品していました?私が見たときは何もなかったような気がしましたが。
長くスマホを持ってなかったので、メルカリは縁がなく、初めて使ったときもスマホに確認番号を送ってくるのですが、持ってなくて息子のスマホの番号を借りていて、今でもそれを見せてもらわないと番号がわかりません(変えられるのだろうけれど)。それも2回も番号を確認しなくてはならず、息子は迷惑メールだと思っているし、めったに使えません(笑)。うまく使えれば、ヤフオクのように競らなくていいし、楽ですよね。
千葉でしたか。行ってみたくなりましたが、隣の県なのにやたら遠いんですよね。南房総なら高速で東京・川崎回りが時間的には一番近い、気軽に行けるところではありません。
hiyocoさん
出品者のサイトを見てみました。千葉と書いてあったし、下にあったのはその人の出品したものでしたね。
全然よく見てなくて、失礼しましたm(_ _;)m
川崎回りー(苦笑)。でもその不便さが千葉のよさなんでしょうね。
メルカリは、買う人にとっては表示されている値段より高くなることはないので安心ですね。しかしまさか土錘が売られているとは(笑)。売った人も、どんな人が何のために買ったんだろうと想像を膨らませているでしょうね。
hiyocoさん
通信欄でもっとやりとりすればよかったですかね。結構ありきたりなやりとりでした。でも、古家具店で土錘を買った時は、店番の女性に「ネックレスにするんですか?」と訊かれて返事に困りました(笑)。
コメントを投稿