2010年11月2日火曜日
優雅な織り具
織り物は、紀元前、中国ではじまりました。
経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通して織っていきますが、織るためには、経糸はぴんと張っておく必要があります。
経糸のまだ織っていない部分は、織り機に巻いておかなくても、遠くの木にでも、家の梁にでも括りつけて張っておけば、用を足します。しかし、織り手の手前に少しずつできていく布は、なんとかして巻き取っていかなければ、経糸を張っておくことも、織り続けることもできません。
布を巻き取るために、現在は多くの地域で、「菊巻き」というものが使われています。
巻き取る棒の端に、止め具のついた歯車状の「菊」がついていて、巻き取り棒が一方方向にしか回転できない仕組みになっています。それによって少しずつ、織りあがった布を巻き取っていくのですが、もちろん、必要なときには止め具を外して、広げたり、経糸を緩めたりすることもできます。
ところが、カンボジアでは、「菊巻き」を使わず、「巻き取り板」を使っていました。
プノンペンに住んでいたころ、アパートに飾り棚や本棚がなかったので、私はこの巻き取り板を買ってきて、レンガを組み合わせて棚にしたり、透かしのある板は、タオル掛けにしたりして使っていました。
八郷の家では、巻き取り板は欄間にしたり、一部は掃除道具掛けにしたりして使っています。
巻き取り板の両端には、きれいな模様が彫ってあり、赤や金に彩色されていました。
カンボジアでも、今では菊巻きのついた織機を使う人が多くなりました。しかし、まだ巻き取り板の、古い織機を使っている人もいます。ただ、模様のない、一枚の板を使っていますが。
巻き取り板は、受け具に通して、織機に固定します。この受け具もまた美しいものです。
巻き取り板の両端で使うよう、受け具はペアになっています。
美しく彩色した受け具もあります。
機織りが楽しくなる美しさです。
織物一つ取ってみても、クメール人が、余裕のある美しい生活を送っていたことがうかがえます。
蛇神ナーガを形どった受け具もあります。
背中には、美しい鱗もついています。
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