2026年9月23日水曜日
大きなポケット
このところ、毎日の温度差が大きいので、箪笥の中に見つけたヴェストで気温調節しています。大きくつくってあり、軽いので着やすい。そういえば星茂子さんはとっても着やすい服をつくっていたなぁと、懐かしく思い出しました。
1990年代のはじめごろ、今のように着物のリフォームが盛んでなかったころ、星さんは「大きなポケット」というブランドで、布(法被や着物など)選びから、解き、裁断、縫い上げと一人でやって、服ができたらデパートに小さな小さな店を開いて売っていました。
星さんが店を開くデパートは2店くらいあったか、売り場は試着室にはそう遠くない通路の一角や階段のわきなどで、パイプでできた洋服掛け1つに服を掛け、その横の椅子に、法被(はっぴ)でつくった洗いざらしの服を着たアフロヘアの星さんがちょこんと座っているというものでした。
上は、星さんと初めて出会ったときに買った、法被をリフォームした服です。
紋を別々にして後ろと前に使い、
右胸にどこから切ってきたものか、赤い花のアップリケをして遊んだりと、星さんらしい服です。
穴が開いたり、かぎ裂きができたところは、表から繕っています。
「私の服は型紙をつくらないで立体裁断するから、着やすいわよ」
と星さんが言う通り、身体に合わせて立体裁断すると言う服は、確かにとても着やすいものでした。ただ、ズボンやレギンスを履くと脚にまとわりついて歩きにくいので、このワンピースには、紅絹(もみ)の裏地を、私が勝手につけてしまいました。
その後、星さんが店を出しているところでもう1度偶然に出逢い、そのときから案内の葉書をもらうようになって、以後半年後、ときには1年後に、服がたまって星さんがデパートに出店するときお会いするようになりました。
今年の夏は、久しぶりにこのワンピースを着る機会がありました。
端午の節句の幟(のぼり)でつくったワンピースで、
「着るとね、ちょうど武将の顔があったところに着た人の顔がくるようにつくったの」
と、星さん。
幟は、戸外で日光や風にさらされて、布が弱っているものが多いのですが、これはいい具合に古びているのに、何度も洗ってもしっかりしています。
星さんの服の中で、これが一番出番が多かった服かもしれません。
蚊絣(かがすり)の単(ひとえ)のコートで、薄くて嵩張らないのに羽織ると暖かいので、特に遠出をするときに重宝します。
所々に型染めの鶴のアップリケがあります。
藍染は、他の色のものと一緒に写真を撮らないと黒くなってしまいますが、実物はもっと美しい藍色です。
星さんの服の中で、おそらく最後に買ったコートですが、これだけはあまり着る機会がありませんでした。
表地が2種類の絣で、裏地に縮緬(ちりめん)を使っているのですが、裏が絹なので滑りやすく、前開きですから、すぐに肩から落ちそうになるのです。着やすい服をつくってきた星さんにしては珍しいというか、私が着こなせなかったのかもしれません。
星さんは、デッドストックなど、新品の布は使いませんでした。
着古した布の中には、しっかりしているように見えても脆くなっている布もあり、中には解いて洗濯機で洗ってみると破れて、使いものにならなかった布もあったそうです。
ブランド名の通り、どれにも使いやすい大きなポケットがついている、星茂子さんの服でした。
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