2024年8月12日月曜日

『みおつくし料理帖』

「つながる図書館」でY・Sさんにお会いした時、
「ブログで見たけれど、『あきない正傳 金と銀』は私も読みました。『みおつくし料理帖』は読みましたか?」
と尋ねられました。『みおつくし料理帖』は、高田郁さんの代表作の一つです。
「いいえ、ドラマを観ただけです」
「『みおつくし料理帖』も面白いですよ。全巻お貸しするから読んでみてください」
と勧められ、後日貸していただきました。


買えば楽しむに違いないと思いながら、長い長い物語を読むことに踏み出せないでいたところ、貸していただいたことで、毎夜毎夜、楽しく読ませていただきました。
大阪の洪水で孤児になった少女澪が料亭のご寮さんに拾われ、旦那さんに料理の才を見出され、様々な困難に直面しながら、迷いながら食と向き合い、自分の歩く道を見出していく物語です。


『みおつくし料理帖』シリーズには、本物語のほかに物語に出てくる料理の作り方を集めた『みおつくし献立帖』と、登場人物のその後を書いた『花だより』があります。
Y・Sさんは『花だより』は持っていらっしゃらなかったので自分で買って読みました。

小説にしろ漫画にしろ、私は物語がハッピーエンドで終わるのが好きです。なにも、いっときの現実逃避に読む物語の中でまで、悲劇で終わって欲しくない、楽しい終わり方しか読みたくありません。
また、物語が終わった後の「その後の物語」はなかなか楽しいものです。『あきない正傳 金と銀』も、『契り橋』と『幾代の鈴』は外伝的なものと後日談的な物語がありましたが、『みおつくし料理帖』の後日談の『花だより』も楽しめました。

『みおつくし料理帖』には、『あきない正傳 金と銀』に出てくる「蓮飯」や、「浅草紙」、「吉原の桜見物」などのことが書かれていて、にんまりしました。蓮飯とは上野の不忍池あたりで売られていた混ぜご飯のことで、店によって蓮根を使ったり蓮の実を使ったりと、いろいろ工夫されていたそう、また浅草紙とは、古紙を集めて漉きなおしたちょっと色の悪い紙のことで、江戸時代には浅草にたくさんの紙の再生産の工房が集まっていたそうです。
もっとも、『みおつくし料理帖』の方が先に書かれたのだから、これらは『あきない正傳 金と銀』にも再登場したというべきかもしれません。


また、『銀二貫』で真帆屋の嘉平が考案した、「琥珀寒」も出てきて、馴染み深い名前に、いっそう江戸時代を身近に感じました。
江戸時代小説は、ほとんど江戸が舞台ですが、それに抗って高田さんは大阪を主たる舞台にして描かれています。





 

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